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「泰誠…!?」
「ちょっと来い」
「泰誠!どこ行くの?もうホームルーム始まるよっ…!」
「そんなのどうでもいい」
泰誠…怒ってる?
いったいどうしたんだろう。泰誠に掴まれた腕が痛い。こんな泰誠見た事無くて、僕の不安を掻き立てる。
教室を出て、階段の踊り場まで連れて来られた。教室から少し離れただけなのに、騒々しさが消えて妙にしんとしてる。ようやく腕を離してくれた泰誠が、ゆっくりと僕を振り返った。
「ーーー昨日…東藤に送ってもらったんだよな?」
「……うん…」
泰誠の声がいつもと違う。一見口調は穏やかだけど、いつもの優しい柔らかさが無くて、聞いた事のない重さがある。聞かれる事は予想していたけど、急な態度の変化の理由が分からなくて、不安が一層増した。
「送ってもらっただけか?」
「ーーーえ?」
「それだけかって聞いてるんだよ」
いきなり核心を突くような問いに、一瞬言葉に詰まった。この時、僕はどんな表情をしたんだろう。自分でも分からないけれど。でも、その時の僕の表情が泰誠の琴線に触れたのは間違い無さそうだった。
唐突に肩を押され、壁際に追い詰められる。相反する優しい手付きでシャツの襟を掴まれて、それからゆっくりとボタンを外された。元々第一ボタンを留めていなかったから、二つ目のボタンを外されると、襟元がはだけて鎖骨が露わになる。意味が分からなくて、僕はされるがままだった。
「ーーーやっぱり」
泰誠が静かに呟いた。
「な、に…どうしたの?泰誠…」
「どうしたの?それはこっちが聞きたいよ。コレって…キスマーク、だろ?」
キスマーク?
そう言われても、直ぐには何の事だか理解が出来なかった。ボタンを外した泰誠の指が、そのまま鎖骨をなぞる。そうされて初めて、僕は泰誠の言動の意味を理解した。
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