5/13
前へ
/547ページ
次へ
++++++++++ 診察用のイスに腰掛けた先生が、ニヤニヤと笑みを浮かべて僕を見ている。 「初めてなのに後ろだけでイクとか、そんなに良かったか?」 蔑むような笑み。僕は気力も体力も奪われて、思うように身体が動かせない。と、近付いて来た先生が、取り出したスマホで汗と体液にまみれ呆然とした僕の姿を写真に撮った。 「……なッ!?」 撮った画像を見て、意地悪そうに笑う東藤先生。信じられない。これでも本当に教師なのかと疑うが、残念ながら間違いなく教師であり、しかも僕の担任なのは変えようの無い事実だった。 「嫌がってた割にはエロい顔してんな。もしかしたら千景(ちかげ)に負けず劣らずの淫乱なんじゃねーの?」 千景とは堤先生の事だろうか。 保健医の堤先生。 うちの学校は男子校だからか、優しくて温厚で、ふんわりとした花の様な印象で。加えて、線の細い女性的な雰囲気の堤先生に、密かに憧れている生徒も多いって噂だ。ただ、少なくともその印象は、僕の中では今日限りだ。 東藤先生がニヤニヤしながらスマホの画面を見ている。怠い身体をやっとの思いで起き上がらせて、スマホを取り返そうと腕を伸ばしたけれど。やっぱりそれは無駄だった。チラリと見せられた画面には、トロリと溶けた表情の僕が写っていて、恥ずかしいを通り越し、そんな表情をしている事のショックの方が大きかった。 「それッ…消して下さいっ……お願いします!」 「何だよ、お前も楽しんだだろ?」 「た、楽しんでませんッ…!」 「この顔が証拠だ」 そう言った先生が、またスマホの画面をこちらに向ける。怖くて、あんな無理矢理な行為は嫌なのに、どうして僕の身体は反応してしまったんだろう。まるで自分じゃないような表情を浮かべる、画面の中の僕。先生が誰かに見せるかもしれない心配よりも、あんな自分がいる事の方が許せなかった。何がなんでも削除したくて、悪足掻きのようにスマホに手を伸ばした、その時。 「あッ………!?」 目の前の景色が歪んで、まるで平行感覚を無くしたみたいに身体が揺れた。支えようと伸ばした手はあらぬ方向に伸び、バランスを保てず、僕はベッドから転落しそうになった。 ギュッと両目を瞑り、覚悟を決める。でも、身体は床に落ちる前に支えられた。
/547ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1726人が本棚に入れています
本棚に追加