僕の枷

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「拓海、どうだった?」 泰誠に声をかけられて、ぼうっとしていたことに気付く。 「え……?あ、うん…まぁまぁかな」 「お前化学得意だもんな。いや、拓海の場合は勉強全般得意か」 「そ、そんな事ないしっ……泰誠だっていつも点数いいじゃん!」 「拓海には敵わないだろ?今度拓海がカテキョしてくれると助かるんだけどなー」 「あはは、別にいいよ」 泰誠とはーーー… いつも通り。 テスト期間中だった事もあり、泰誠が気を使ってくれてたんだと思う。告白された次の日も、泰誠はいつもと変わらない態度で接してくれた。そういう所は、僕が知る泰誠らしい優しさだと思う。 「おい瀬尾」 泰誠と話していると、東藤先生から名前を呼ばれた。久々過ぎて動揺を隠せない。 「は、はいっ…」 「テストは今日中に採点して返す。帰りのホームルーム前に職員室に取りに来い」 「……ぼ、僕がですか…?」 「クラス委員長だろうが」 「あ……は、はいっ…」 一瞬目が合う。けど、先生の視線には何の感情も無かった。居たたまれなくて、僕の方が先に視線を反らしてしまった。 「………拓海」 「…え?あ…なに?」 「今日…部活は?」 泰誠が何を聞きたいのか、何となく察する事が出来た。テストも終わり、泰誠への返事ももうあまり先延ばしは出来ないだろう。 「うん、ミーティングが…あるかな」 「そうか。あのさ…部活が終わったら時間もらってもいいか?あの時の返事……聞きたい」 優しいけれど、真剣な眼差し。親友としてずっと泰誠を見て来たけど、こんな眼差しを見るのは初めてかもしれない。いや…もしかしたら、僕が気付いていなかっただけなのかなと、ふと思った。 「分かった」 僕がそう言うと、泰誠の表情がほんの一瞬だけ緊張したように堅くなった気がした。
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