先生。

僕の枷

「変なこと想像してるでしょ」
「は……！？な、何でっ……」
「顔が真っ赤。あの時の私でも思い出してるの？」
「………っ」
「まぁ、君にはインパクト大きかっただろうし、仕方無いね」
「それで…は、話しって何ですかっ…」

堤先生の言う通り、話しているとあの日が蘇る。全ての元凶の日。僕の日常が日常でなくなって、僕が僕でなくなった日。あまり思い出したくない…だから早く話も終わらせて、早くここから去りたかった。

「率直に聞くけど、瀬尾くんは征成のコト好き？」

本当に、あまりに率直な質問で、僕は一瞬フリーズした。

「………は？なっ…なに…それっ……な、何で僕がッ…！」
「あれ？違うの？私の勘違いなのかな～？」
「し、知りませんよ…！そんなのっ……」

何でそんな事を聞くんだろう。堤先生の言いたい事が全く理解出来ない。それを聞いてどうするって言うんだろう。やっぱり二人は身体の関係以上に何かあるんじゃ…

例えば……恋人同士、とか？

相手問わずな東藤先生だけど、堤先生との関係は少し違うようにも思える。下の名前で呼び合って、確かに親しげにも見えた。

ーーーまた、心臓がギュッとなる。

「あれからもしばらく征成と続いてたよね？もう続いてないの？」

続いてるとか続いてないとか、そもそもそんな関係なんだろうか。付き合ってる訳でもなくて、ただ先生の気まぐれで呼び出されて。自宅へ送ってもらったあの日…あの時僕が拒んでから、先生とは話してない。呼び出される事も無い。これは続いてないって事になるんだろうか。先生が気まぐれたから、もしかしたらまた呼び出されるかもしれない。だったら、まだ終わっていないんだろうか。

「ーーー分かりません…」

僕と先生との関係がどんなものか分からないから、続いているのかとうかも分からない。そこに僕の意思は無くて、全ては東藤先生次第だから。まるで言い訳みたいに、そう思った。

「…ふぅん、“分かんない”ね。まぁもう続いてないならいいんだけど。好きじゃないなら征成の事を突き放してあげてね。瀬尾くんが望んでるなら別だけど」
「の、望んでませんよッ……何で僕が…！突き離すもなにも、いつも東藤先生が強引にっ…」

嘘だ。
本気で拒めてなかったクセに。

「そうなんだ？じゃあヨロシク」

何だろう、心が痛い。