先生。

僕の枷

「……何でそんなコト言うんですか？堤先生がホントは東藤先生の恋人だからですか……？」
「私が？征成の……？」

だから僕がいつまでも東藤先生とそういう関係にある事を許せないんじゃないだろうか。でも、最初にしてきたのも……その後も、全部東藤先生の方だ。それに最初は堤先生だって止めなかったじゃないか。僕だけが良いように振り回されているようで、何だか腹が立ってきた。

「そんなのッ……東藤先生に言って下さい！僕が嫌がっても無理矢理するのは東藤先生なんですからッ…！」
「征成には言ってるんだけどねー」
「僕は望んでないッ……あんな関係……少しも望んでなんか…！ましてや好きとかっ……絶対ありえませんから……！」

あぁ、何でこんなに心が痛いの？

まるで、嘘を重ねたような罪悪感。いったい僕はどんな嘘を吐いているというのだろう。

「まぁまぁ落ち着いて瀬尾くん」
「落ち着いてます！堤先生が変な事を言うからっ……あ、あんなことされて……僕が東藤先生を好きになんてなるワケないッ…！」
「……ふぅん、そうかなぁ」
「そうです！」
「そんなにムキになるなんてアヤシイ～」
「堤先生……！」

この人は、僕をからかって楽しいんだろうか。こんな事を言う為に僕を連れて来たのかと思うと、余計に腹が立つ。

「話しってそんな事だったんですか？それなら僕はもう帰ります！」

僕がそう言うと、「ごめんごめん」と悪びれる風でも無く謝って、それから少し真剣な表情になった。

「これはね、征成のためなんだ」
「……先生、の？」

どういうことだろう。
それに対して、堤先生はなにも答えなかった。

僕との関係は、先生にとって良くないとか……そういう事だろうか。でもそれなら、それこそ東藤先生本人に言って欲しい。弱味を握って、それを盾に僕を脅して、関係を迫るのはいつも先生なんだから。

僕が望んでるわけじゃない。
こんな関係……少しも望んでなんていない。

ーーーただ、拒みきれないでいるのも本当で…

"僕は望んでない"

そう否定すればするほど、心臓が抉られるみたいに苦しいのは何故なんだろう。