僕の枷

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「あんな性格でも征成はモテるからねー。君が本当に嫌で、それをハッキリ伝えてくれればアイツはもう手を出さないよ。無理に君を抱かなくても、征成に足を開く相手はいくらでもいるもの」 ―――知ってる。 そんなのは堤先生に聞かされなくたって、もう知ってる。先生には他にもそういうコトをする相手がいるのなんて…… 「……それは……僕以外ならいいって事ですか…?」 「……?うん、まぁ…ね」 「どうして…?東藤先生にはセックスするだけの相手が他にもいるのは知ってます!なのにどうして僕はダメなんですか?大勢の中の一人に僕がいたって変わらないじゃないですかっ…!」 僕は何を言ってるんだろう。矛盾してる。東藤先生とのあんな関係は断ち切りたくて、僕自身は望んでないと言ったそばから、僕だけがダメなのだと言われ、それを悲しく思う僕がいる。 「―――瀬尾くん…君、征成との関係は望んでいないんじゃなかったの?好きじゃないんでしょ?」 当然、堤先生にも指摘された。 「好きじゃない!望んでなんてない…!だって僕はっ……先生に乱暴されたんです!無理矢理あんな酷いコトされてっ……普通だったら嫌悪したり、軽蔑したっておかしくないのに……こんな関係望むはずない!望むはず…ないんだっ…」 「………瀬尾くん…」 堤先生が溜め息を吐いた。何故か呆れた様な、それでいて少し優しげな表情。堤先生の真意が読めなくて戸惑う。 「君はまだ若いし、あまり恋愛の経験も無さそうだから仕方ないけどーーー」 「……だからっ…さっきから何が言いたいんですか…」 「身体から始まることもあるよ。身体を重ねれば、少なからず情は沸くものだからね」 「身体から……始まる?何が…」 「―――さぁ、何でしょう」 子供みたいな無邪気な仕草で、堤先生が首を傾げた。やっぱり言いたい事は分からない。 「知りたい?」 そう言った堤先生が、さっきまでの優しい笑みとは真逆の妖艶な笑みを浮かべた。同じ男の僕から見てもドキリとするような綺麗で艶めいた微笑みは、きっとどんな人間をも虜にするに違いない。 東藤先生だって、もしかしたら―――… そう思うと、また心の奥がシクリと痛んだ。その理由は、分からないけれど。
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