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「……………っ」 「危ねぇな。何やってんだ……てかお前、身体熱くないか?」 「そ、そんな事ないっ……は、離して…」 「じっとしてろ」 先生の手が首筋に触れた。さっきまで散々僕を翻弄したその手に心臓が早鐘を打つ。また何かされるのかと身体が強張るが、意外にもーーー本来は当たり前だが、先生は何もしなかった。その代わり、何度も掌を首筋や頬や額に当ててくる。 「お前、熱があるだろ?」 言われれば、確かに身体が熱い気がする。目を覚ました時には引いていたと思ったけど、今になってぶり返したらしい。そう自覚すると、益々目眩を覚える。それもこれも、全ては東藤先生のせいに他ならない。 「だ、誰のせいですかッ…病人に手を出しておいてっ…!」 「テメェのせいだろ。テメェが覗きなんかしやがるからこんなコトになったんだ。それにさっきまでは熱なんか無かっただろうが。ま、ナカは確かに熱かったけどな」 「………ッ!さ、最低です……!そ、それに覗きだなんて…人聞きの悪いこと言わないで下さいッ…!もう離して下さいっ……か、帰ります!」 腰を支える先生の腕を払い除け、脱がされた制服を掻き集める。本当は足にも力が入らなかったけれど。でも、このまま東藤先生の手を借りる事もしたくない。早く服を着て、さっさと立ち去りたかった。けど、自分で思ってる以上に熱は高くなってきているらしい。ベッドから降りて一歩踏み出した途端、またくらりと目の前が回った。身体のあちこちが痛いと言うより怠い。 「おい瀬尾…!」 先生の声が遠い。力を入れてるつもりが全然入ってなくて、頭から血が引いて行く。目の前が霞む。そのまま意識はフェードアウト。 僕は気を失ってしまった。 「……ったく、余計な手間かけさせんじゃねぇよ」 面倒臭そうにそう呟いた先生に再び抱きとめられた事を、僕は知る由もなかった。
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