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夕方のざわめきの中、風にのって聴こえてきたそのピアノの旋律は、私の心を撫でるように癒してくれた
次から次へと奏でられる音に気づけば足はそちらに向いていて、階段を一段上るごとに、心拍数が上がっていった
一階から二階へ差し掛かったとき、その柔らかい音は止まってしまう
焦って三階まで駆け登り、音楽室を開くとそこにはもう誰もいなかった
ピアノの鍵盤に恐る恐る触れると、ポーンと弱々しい音が一つ響いた
夕日が差し込む音楽室
ピアノを照らすその光がひどく綺麗で、今ここに座っていたであろう人物が、どんな子なのかとても気になる
もう一度聴きたい
会って話をしてみたい
そう思った、高校2年の4月
忘れられない、その音との出会いだった
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