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「……それは、娘がお世話になっております」
我々が欲しかったリアクションではなかったため拍子抜けしたが、父の促しで私たちはレストランの入り口をくぐった。
「いらっしゃいませ。四名様、ご予約ですね」
「はい」
「守山さまでお間違いないですか」
「はい」
「ではお席へご案内いたします」
華やかな内装に見るからに豊かそうな客たち。まるで背伸びしながら「家族」を取り戻そうとしている私たちが時期尚早であることを暗示するように、私たちは不釣り合いだった。
横を通りすぎても見向きもせず、しずかにフランス料理をたしなむ客たちに、私は気後れした。と同時に、後悔もした。私たち家族には、色んな意味で早すぎたのだと。
少なくとも、父と母水入らずの時間は設けるべきだった。その証拠に、店員が気を利かせたお陰で隣り合って歩く前の二人が、夫婦にしては余りにもぎこちない。どう対応してよいか、距離を測りかねているのだろう。
案内されたのは、店の奥のテーブル。「Reserved」と美しいカリグラフィーで書かれた紙を店員が上品に回収し、男の店員たちが椅子をさっと引いた。
「左から、座るんだよ」
夢心地のようにぼぅっとする三人に、父が優しく告げる。私たちははっと我に返り、椅子に座った。
座るモーションにリンクするように、タイミングよく戻される椅子に慣れない私たちは、思わずいつものように自分の両手で椅子を引こうとし、慌ててその手を引っ込めた。
「今宵は当店にお越しくださり誠にありがとうございます」
シェフのする高い帽子をした男性がテーブルの側に来た。
「私は当店の料理長、三木宗助です。よろしくお願いします」
料理長と名乗った彼が頭を下げると、私たちも慌てて頭を下げた。
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