諦めの日々

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 コツコツハイヒールの音をたてながら私が向かうのは、某大企業が入ったビル。 全国展開している子供用玩具のメーカーの本社だ。  古くからのカルタや独楽から戦隊ヒーローのプラモデル、はたまた菓子メーカーとのコラボ商品まで幅広く扱っている。  開発部に営業部に人事部。大きな規模で人が動くこの会社で、私は受付をしている。  受付といっても、やることは少ない。各階の電話番に電話を取り次ぐくらいで、あまり仕事はないのだ。だが、たまに手慰みにたわいもない話をしにきてくれるサラリーマンたちの心が温かく、なんだかんだで私は低月給のこの仕事を続けている。  私はいつものように社員証を機械に当て、暗証番号を入力した。ピッピッと耳慣れた音が響く。
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