憎しみの果てに

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 身の上話を、父は切り上げた。 「そんな訳で、父さんは父さんの父さんが死んでから、人と向き合うことから逃げてはいけないと思ったんだ。例えそれが衝突しか生まなくても」  話をしすぎてくたびれたから少し休憩、と父は笑ってナイフとフォークを手にする。私たちも父に習って食事を再開した。  私は反抗期だった頃の自分と、やり場のない怒りの矛先に向けられた父を想った。  父が私を諦めなかったのは、めげずに怒りを受け止めてくれたのは、父の優しさのお陰。なのに、私は父親の優しさに最後まで気づかなかった父のように、父親の想いをないがしろにした。  私が実家を捨てている間に、父が死ななくてよかった。  まだピンピンしてきる父の前でこんなことを思うのは不謹慎かもしれないけど、父が死んでからその優しさに気づくなんて、心がバラバラになってしまいそうでとても耐えられそうにない。  孝行したいときに、親がいる。今しか、あの言葉を伝えるときはない、と思った。 「父さん、母さん」  父と母がこちらを見る。 「私を産んでくれて、育ててくれて、ありがとう」  今までは言えなかった、自分をこの世に送り出した特別な二人への感謝が、やっと心から言えた気がする。  ふわりとテーブルが華やぎ、体が温かくなった気がした。  家族の団らんとはこのようなものなのだと、初めて私は知った。
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