枯れたひまわり

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「柿本さんが来てくれるとなんか元気になるなあ」  受付の控え室に入るや、のんびり屋の佐紀に言われる。これも日課。 「なんで柿本さんっていつもそんなにキラキラしてるの?」  この子は見た目だけじゃなく心まで綺麗な珍しい子。皮肉とかじゃなく、私を称え、あろうことか憧れてくれている。  でもね、貴女の見ている柿本さやは偽りよ。  例えるなら糊でコーティングされて不自然な姿勢を保つ、その受付にある生け花のよう。  有名な生け花師の作品を、社長が永久のものにしたいと強情はってコーティングしてしまった。  生け花は生けるからこそ映えるのだと生け花師は抗議したが、聞き入れられなかった。  私はこの花のよう。  死んだまま生きてるから、いつも同じ、美しい波長の光しか放てない。枯れゆく定めもまた植物自身の一面であるのと同じで、醜い面もなければ、それは人間として薄っぺらいということ。要は私は完璧な女というある意味戯曲のなかにしか存在しない作り物なのだ。  女として笑い、泣き、嫉妬し、怒り……、私には出来ない。私は演じているだけである。まるで俳優のように。
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