偽りの性

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 家から持ち出した金で、コンビニやネットカフェに入り浸り、ボサボサの頭で夜の街をさ迷っていた。  連帯感を示す根性焼きやリスカの痕だけが、私の孤独感を癒してくれた。  そこでは、少し身体を痛め付けるだけで、心は自由でいられた。私と似た性格の女の子もいた。  自分のことを「俺」と呼んでも、誰も嫌な顔をしなかった。  救われた気がした。  私の生きる世界はここである、と思った。  所持金が底をつきそうになっても、生きたいように生きて死ねるなら本望と感じていた。  そんなとき、マスクで顔を隠した通りすがりの人間に、一つの名刺を渡された。  渡してすぐ足早に立ち去った人を一瞥して、私は名刺に目を落とす。 『レズ専門バー 椿』  私はそこに、店員を冷やかしてやろう、くらいの気持ちで向かった。
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