01.はじまり

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 中二の頃だった。  父が急に再婚の話をしてきたのは……。  休日の昼下がり。  頬を緩ませた父がそれまで家政婦だった女性と、うちの珍しい青色のソファに仲良さげに座っていた。  香水の匂い  ひらひらとしたスカートの裾  クルッと巻いた髪  喋るたびに  上と下の唇がねっとりと離れる音が聞こえそうな唇。  笑ってる顔。  今までこんな姿をしていなかった家政婦が、急に女を出してきて気分が悪くなった。 「パパはこの人と再婚することにした」  思春期の僕はうつむきながら、胃のあたりから込み上げてくる酸っぱい唾を飲み込みこむのに必死だった。  父子家庭だからと気負って僕に厳しかったのは知ってる。  でもこんな仕打ちは酷いと思った。
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