01.はじまり

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 フワフワの絨毯は、夢の中を歩いているようだった。 「壮一郎様はお一人で住まわれてますが、私を始め多くの使用人がおりますので……」  いろいろ話しは聞こえているが、まったく頭に入ってこない。階段を登って長い廊下を歩いていると、突き当たりの扉の前で男性が一人待っていた。 「こちらがお部屋です」  翠川さんは男性に軽く会釈をしただけで、二枚扉を開け放った。 「…………!」  絶句するとはこのことだ。  言葉が一つも見当たらない。  天蓋付きの広いベッド。  机は勉強机とは呼べないような広さ。  猫足のソファに壁一面、天井まである書架……そしてとにかく広い。今まで引きこもっていた部屋の何倍だろうか。 「瀬奈様!?」  頭がクラクラしてきて、その場に座り込んでしまった。 「………ここが僕の部屋ですか?」 「ええ。壮一郎様の次に広い部屋を用意しましたが、ご不満のようなら庭に離れを建てても良いと言われてます。しかし、それも工事中は……」  翠川さんの口からつらつらと語られる言葉が理解できない。腕を支えられ、ソファに座ったがその柔らかにも身体が震えてしまった。  跪いた翠川さんが僕の顔を覗き込む。 「瀬奈様、ご気分でも悪いのですか?」  目頭が熱くなって目から涙がポロポロと溢れてくる。 「…………あれ?」  びっくりしすぎて涙が止まらなくなった僕は、慌てて目を擦ろうとしたがその手を止められ、代わりに差し出された白いハンカチで涙を拭われた。  
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