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浴衣をはためかせ、前へ前へと進む彼女。
「ふふ、銀河鉄道に乗れるなんて楽しみですわ」
口元を綻ばせ、楽しそうにする彼女を見る度に、その姿が可愛らしくて、つい本当の事を言えなかった。
けれど、もう後がない。
「ち、違うんだ!
あれはエイプリルフールの冗談で」
「ウフフ、天の川まで見えて、絶好のチャンスですわね」
もはや、妄想に入って、僕の声は聞こえないらしい。
急がないと、
急がないと、
急がないと、
「何してるの?早く」
僕を急かすように、一瞬振り向いた彼女。
この機会を逃すまいと、僕は彼女の腕を掴むと、一気に抱き寄せる。
驚いてバランスを崩しかける彼女を優しく抱き締めて、耳許で囁いた。
「いかないで!
銀河鉄道なんかに乗らないで、僕と一緒にいて」
「え、あ、うん」
僕の一生一代の大勝負。
彼女の夢を壊すことなく、成功したみたいだ。
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