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「神崎さん?どうしたの、何かあったのかい?」
私の慌てた様子に気が付いた日暮委員長が本の貸し出しや返却を行なう図書室カウンター越しから声を掛けてきた。
あまり感情の籠っていない相変わらず棒読みな口調で…
「…だ、大丈夫です。何でもないです」
私はそう答えると委員長の返答を待たずに、そそくさと図書室の奥の棚が並んでいる所へ行き、本棚の整理を始めた。
何か嫌なことがあった時は、これをすると心が落ち着くのだ。
しかし、今日はなかなか平常心へは戻らない。
…まだ心臓がドキドキしている。
言っておくが、これはあくまでも急に目の前に人が現れて驚いたからで、断じて相手が男子だったからではない。
何故なら、もはや私にそんな乙女心は残ってないのだから。
せっかく、良い読書の場所を見つけたと思ったのに残念だ。
思わずため息が漏れる。
あれやこれやと考えながら本を整理していると、最終下校時刻のアナウンスが流れ始めた。
結局、今日はまともに本が読めなかったではないか…
…そして、まだ心臓がドキドキしていた。
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