1ー1

6/10
103人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
そして、今日もいつものように図書室で最終下校時刻まで過ごし、この愛読書を時間の許す限り堪能する予定だ。 3階の廊下から階段を下りて2階の廊下を右に進んだ突き当たりに図書室がある。 だが、私は突き当たりまで行かない所でふと立ち止まった。 なぜなら、毎日のように通っているはずの経路に違和感を覚えたからだ。 図書室の手前に見慣れぬ教室があって、今それに初めて気が付いたという奇妙な違和感を… 教室の名札は空白なので、きっと空き教室なのだろう。 私は恐る恐るその教室の引き戸の取っ手に手を掛けた。 鍵は掛かっておらず、すんなりと開いた。 教室の中は普通の教室と同じく黒板、教壇、木製教卓があり、その対にいくつかの机と椅子がきちんと並べられていた。 窓には厚めの深緑色のカーテンが端で結ばれ、代わりに奥の白いレースのカーテンが閉まっていて、適度な陽射しが教室内に差し込んでいる。 どうやら、ただの空き教室のようだった。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!