【絶対なる】距離【支配8】

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ひとつ前の調理長が辞める事になった時、外部から腕のある人をスカウトしてくる費用もなかったから、 一番勤務歴の長い現調理長が後釜に選ばれたって話を聞いたことがある。 「和食の店内もより視覚や雰囲気でも堪能出来る内装に手を加えたい」 「改装するんですか?」 「ああ。今の内装は正直味気ない。年々増加している海外からのゲストを取り込む為にも和の雰囲気をより出したい。ま、一番重要なことは料理だけどもな」 「確かに……」 しかし、 お昼の出前はてっきり思いつきかと思ったけど、リサーチしてたのかな? 「仕事熱心ですね」 「熱心にやらないと、違う畑から来たこんな若造が総支配人なんて出来ないだろ」 「……」 「なんだよ」 「いえ……ちょっと意外だなと思って」 「何がだよ」 「もっとこう、〝若槻グループ御曹司の、この俺様が傾いたホテルを立て直してやる”位に自信満々に就任してきたのかと思って」 って、つい本音が零れてしまっってヤバいと焦る。 「〝俺様”……〝自信満々”……ね」 「い、いえ……その……」 「言いたい事あるならはっきり言えよ」 「わ、若槻総支配人は昔から学業もスポーツもなんでも出来る人で、何時の間にか周りに崇拝されているというか何というか……とにかく!俺様に不可能は無い位の人だから、今みたいな発言は意外だなって……」 〝違う畑から来たこんな若造が”って、 私にとっては何処か弱気な発言に思えてしまったから、つい言ってしまった。
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