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「Museからだ。ちょっと失礼」
「ど、どうぞ」
また、少し私と距離を取って「はい」と電話に応える若槻総支配人。
私は日本酒が注がれた切子グラスを見つめながら、懐かしい頃の記憶を辿っていると、
「希穂」
「は、はいっ」
何時の間にか電話が終了していて、いきなり名前を呼ばれたものだからビクッとしてしまう。
「ホテルに戻る事になった」
「え……?今からですか?」
腕時計を見ると、もう21時を過ぎてる。
「結婚式の二次会の予約が入っているんだが、担当が予約人数を誤って受けていた様で現場が混乱しているらしい」
「ミスがあったんですか……」
「ああ。申し訳ないが、今から俺はホテルに戻る。希穂はゆっくり食事をしてくれ。タクシーは手配してあるから」
「わ、私も一緒にホテルに戻ります……!」
「お前は今日は業務終了だ。不必要な残業はしなくていい」
「ですが、私は今総支配人付き秘書です。幾つかの部署を経験して館内のこともそれなりにわかっているつもりですし、何かお手伝い出来ることがあるかもしれません」
って、
デキル女っぽく言ったはいいが、
ちょっと出しゃばってしまった……?とか、言った傍から心配に思っちゃうけど……
「わかった。じゃあ、直ぐに戻るぞ」
「……はい!」
私は若槻総支配人と一緒にホテルに戻ることになった。
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