上司と部下の「恋」模様

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 仕事に夢中になると食事をするのも忘れてしまう。  それは悪い癖だと三木本によく怒られる。それゆえか、声を掛けられなかった事に気が付いたときには、昼休みも残り十分ほどになっていた。 「これじゃ食事は無理かな」  ご飯はあきらめて煙草を吸いに喫煙室へと向かう。  そこには波多と久世の姿があり、紫煙を吹きかけられ久世が嫌そうに顔を背けている。 「ワンコちゃんはタバコ吸わないんだから、ここにいるの辛いだろう?」 「八潮課長、お疲れ様です」 「お疲れ様」  シガレットケースから煙草を取り出して火をつける。  昇進したときに三木本と波多から贈られた品だ。それ以来、ずっと愛用している。  八潮に何か贈り物をしようと言いだしたのは三木本なのだと、貰った時に暴露するようなかたちで波多に教えられた。  その頃から既に自分を好いていてくれたんだなと、一年前、告白をされた時の事を思いだす。  告白の時ですらいつもと変わらなかった。照れる様子もなく、真っ直ぐと自分を見つめて好きだと言ってくれた。  と、そこで昼休みに彼から声を掛けられなかったことを、ふ、と思いだす。  昼休みに入る少し前まではデスクに居た気がしたが、その後はどうしたのだろう。 「そういえば、三木本君は出かけたのかな?」 「確か、他の部署の奴に呼ばれて出ていきましたが、戻ってきていませんね」  他の部署と聞いて、すぐに昨日の男の顔が頭に浮かぶ。
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