上司と部下の「恋」模様

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 三木本は出社時刻より三十分前には会社に着くように家を出る。  その時間帯には八潮は既に出社しており、少しだけでも二人で過ごす時間が出来れば良いと思っての事だ。  いつもなら泊まらない、もしくは家に戻り着替えるだけの余裕をもってホテルを出ていたというのに、昨日と同じ身なりで八潮の前に立ちたくはかったが、そんな事を言っている余裕すらなかった。 「三木本君、もしかして、この前の彼に何かされたのかい?」  昨日と恰好が一緒だし、と、自分を本気で心配してくれている。 「あ……、昨日、友達の家で飲むことになってしまって。着替えとか持って行かなかったものですから」  自分の事を思ってくれているのだと胸が熱くなるが、昨日、利成とした行為を思うと素直に喜べない。 「いいんだ。君が酷い事をされていないのなら」 「課長、俺」  縋りつきたくて腕を伸ばすが、その手を避けるように、 「何もなければよいんだ。さ、席に戻ろうか」  とドアの方へと歩いていく。  一切、触れさせてくれないし、触れてくれない。  優しくされて浮上した気持ちを落とされる。 「ふっ」  力なく椅子に座り込み動けない。  暫くそのままでいたら、心配した波多が中へ様子を見に来る。 「三木本」 「悪い、今戻るから」  何事もなかったかのように席を立ち、デスクへと戻り仕事をはじめる。八潮の視線を感じたが見ないようにし、気持ちを切り替えていつもの自分へと戻る。ただ、痛む胸だけはどうしようもなかった。  いつもの通りに仕事をこなし、今日も誰かと会おうとポケットからスマートフォンを取り出した所で波多と久世に捕まった。  波多の住むマンションへと行くのは久しぶりだ。 「三木本、何にする?」 「ビールで」 「はいよ」  キッチンへと向かいビールとグラス、つまみになりそうなモノを持ってきてくれた。
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