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◇…◆…◇
杉浦のお気に入りの喫茶店まで押しかけたのは流石にまずかっただろうか。しかし、こうでもしない限り距離が縮まらないと思ったのだが、なかなかうまくいかないものだ。
パンだけでは物足りないので、コンビニに寄りおにぎりを買った。
本当は一緒に和菓子屋まで行きたかった。甘い物が好きな事は食事をしたときに知っていたので、どんな反応をするのかが見たかったのだ。
会社に居る時には見せないような表情をするのだろうなと、想像してため息をつく。
自分のデスクに戻るには喫煙室の前を通る。どうやらそこに八潮がいたようで声を掛けられた。
「なんだ、喫茶店に行ったんじゃないの?」
腕時計を見て戻ってくるのが早いと思ったのだろう。
「えぇ、行ってきましたよ」
実は喫茶店の場所は八潮から聞いた。まだ店主が変わる前から通っていた場所なのだと言う。
「珈琲とパン、美味しかったです」
「そうだろう。で、杉浦君はどうしたの?」
それに関して曖昧に笑うと、何かを察したようで頭を撫でられた。
「めげないでよ? あの子を変えられるのは君しかいないって思っているんだから」
「俺よりも八潮課長の方が適任ですよ」
何故、八潮はそんな事を言うのだろう。
自分よりも八潮の方が杉浦を変えることが出来るだろう。なんせ、好きなのだから。
なのに、八潮はそれは違うと首を横に振るう。
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