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「僕じゃ無理だよ」
「それって……」
三木本が居るからかと言葉が出かかった。が、袋を手に下げた杉浦が社へと戻ってきた。
「あ、お帰り、杉浦君」
「八潮さん」
八潮の姿を見て軽く頭を下げ、松尾の姿に眉を寄せる。
その反応の違いも、地味に傷つく。
「あれ、その袋、和菓子屋さんに寄ってきたんだ」
「はい。喫茶店の近くにあると聞いたので。たくさん買ってきたので、これよかったら」
袋の中から団子を取り出した。
八潮の好みそうなモノを知っている。それがまた、松尾の心をズキズキとさせる。
「わぁ、みたらし。ありがとうね。さっそく頂くよ」
と、嬉しそうにそれを持って部署へと戻っていった。
部署のあるフロアに向かい、自分のデスクの椅子に座ると、杉浦がその前に立っている。
「どうしました?」
何故、自分のデスクに行かないのかと、杉浦の顔を見上げた。
「お店にパンフレットを忘れてましたよ。あと、これをどうぞ」
パンフレットと共に、喫茶店で指をさした饅頭を袋の中からとりだしてデスクの上へと置いた。
まさか自分にも買ってきてくれるなんて。驚いて目を見開いたまま相手を見る。
「ありがとう、ございます……」
「あと、よもぎあんぱん美味しかったです」
もしかして、あの時は冷たい態度をとってしまってごめんと、そういいたいのだろうか。
これにそういう意味が込められていたとしたら、また調子に乗ってしまいそうだ。
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