ワンコな部下と冷たい上司

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 金曜日に共に食事をする時、待ち合わせに使う場所がある。  そこは町中に設置された喫煙所で、会社から少し離れた所に設置されていた。  先に退社をするのは杉浦で、そこで煙草を吸いながら松尾を待つのだ。 「杉浦課長」 「行きましょうか」 「はい」  いつか「もうやめましょう」と言われるかもしれない。それでも、そう言われないように杉浦の好みそうな店は調べ続けている。  今日は下町風の洋食店。雑誌で見たのだが、クリームコロッケやオムライスが美味しそうだった。  店内は、小さな頃に家族と行ったレストランを思い出させて懐かしい気持ちとなった。  きっと杉浦もそう思ってくれるのではと思い選んだのだ。 「あぁ、まだここはやっていたんですね」  どうやら来たことがあったようで、懐かしそうに店を眺めている。 「来たことがありましたか」 「はい。小さな頃に。家族と食事といえばここでした。オムライス、おいしいですよ」  ふ、と、柔らかい表情を見せる杉浦に、松尾の胸が高鳴る。 「余計な事でしたね。入りましょうか」 「はい。中で話しの続きを聞かせてください」 「……家族との想い出なんて、関係ない貴方に話しても仕方がない事でしょう?」 「それでも、家族との思い出を話す杉浦課長は楽しそうでした」 「あっ」  目を見開き口元を押さえる。  無意識だったのだろう。顔を背けて店の中へと入っていく。
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