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ドアベルが鳴り、ウェイトレスが席を案内してくれる。
メニューを見れば、雑誌で見たクリームコロッケとオムライスの写真が大きくのっていた。
「杉浦課長がおすすめしてくれたオムライスにします」
「私も同じものを」
ウェイトレスを呼び、オムライスを二つ頼む。
店の中を見る杉浦は、とても懐かしそうに店の中を暫く眺めていた。
暫く、黙ってその姿を眺めていた。今は杉浦の思い出の邪魔をしてはいけないと思ったから。
だが、それも注文の品が運ばれきて終わりを告げた。
目の前に置かれた皿の上には、とろっとろな卵にデミグラスソースのかかったオムライス。
「うわぁ」
見た目だけで既に美味そうで、つい、子供みたいにはしゃいでしまて、杉浦がくすっと笑い声をあげる。
「私の弟も、これを見た時に同じような表情をしていました」
今日はすごく良い雰囲気だ。このまま楽しく話しながら食事をと思っていたら、杉浦から表情は消えてなくなってしまう。
「今回で金曜日に食事をするのは最後にして貰えませんか?」
「……え?」
それからは黙って食事をし、店を出て直ぐに別れた。
最後にするつもりだったから、話をしてくれたのだろうか。
だが、このまま終わりにしては駄目だ。二度と本心を見せてくれなくなるだろう。
杉浦の後を追いかける。
この腕の中へと抱きしめて、逃げ出さないようにしないといけない。
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