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◇…◆…◇
三木本はよく周りをみていると思う。
飴と鞭の使い分けも上手く、さりげなくフォローをしたりもする。
ただ、目つきが悪いせいで怖がられている節があり、同じ課の者ならば見慣れているので大丈夫なのだが、他の部署には彼を怖がる者もおり、その時は人受けの良い後輩、久世大輝(くぜだいき)にフォローを頼むこともある。
八潮が彼らの研修担当をしていた頃から、あまり手のかからない社員だった。しかも優秀で頼りになる存在だ。
かなりの優良物件。
だから告白された時はとても嬉しかった。彼に世話を焼かれながら過ごすのも良いと思うが、八潮は恋人には甘えられたいと思うタイプなのだ。手のかからない彼は自分を必要としてくれないだろう。
彼はフラれると思っていた様で、スッキリしましたと深くお辞儀をし、すぐに気持ちを切り替えた。
あれから一年たつが変わらず片腕として頑張ってくれている。
八潮も遠慮することなく三木本へと仕事を振る。でないと、部下に仕事を振れと怒られてしまうから。
「八潮課長、昼ですよ。飯、食いに行きましょう」
過労で倒れて以来、彼は昼休みになると声を掛けてくる。仕事にかまけて休むことをしない自分を心配してくれているのだ。
「あぁ」
食堂に行きテーブルに着くと、二人の姿を見つけた久世がトレイを手にやってくる。
「ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「良いよ」
テーブルにトレイを置き、頂きますと手を合わせる。
大盛りのライスと生姜焼きとポテトサラダ、そしてプリンが二個。それが見る見るうちに減っていく。
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