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杉浦と松尾
今まで関わりあう事を避けてきた杉浦に、松尾はまずはコミュニケーションをと、あるミッションを出す。
喫茶店の近くにある和菓子屋。そこで部署の皆に差し入れを買うことだ。
「お疲れ様。皆さんでどうぞ」
そう声を掛ければ、皆が驚いた目を向ける。
「ごちそうさまです」
一番に席を立ち袋の中から饅頭をとったのは松尾で、それに続いて皆が躊躇いつつも袋の中から和菓子を手に取る。
「美味しそうですよね」
と、部署の中でもムードメーカ的なベテランの女子社員に声を掛ける。きっとあれはこちらに話を振りやすくする為にしたのだろう。
「課長、どこで買われたんです?」
松尾の狙い通りに、その女子社員が声を掛けてくる。
まだ慣れないので緊張する。表情も強張っているのではないだろうかと、ちらりと松尾を見れば、頑張れとくちぱくをする。
「良く行く喫茶店の近くにあるんですよ。その……、よければパンフレットをどうぞ」
袋から取り出してそれを手渡す。
興味を持った女子がそれを眺め、ふっと松尾を見れば杉浦に優しく微笑んでいた。
それにホッと胸をなでおろし、
「残りは適当に分けてください」
袋ごと女子社員へと渡した。
「ありがとうございます。頂きます」
差し入れをしただけなのに、皆のやる気をいつもより感じる。
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