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久世の気持ちの良い食べっぷりを眺めていたら、それで満足してしまいそうになる。
「課長、見てないで箸を動かしてください」
それに気が付いた三木本が、全然減らない食事を眺めて注意を入れてきた。
八潮のトレイには、半ライスにブリの照り焼きとサラダがのせられていて、それでなくても女子が食うような量なんですから、と、更に言われてしまう。
「わかったよ」
八潮はちびちびと食事を食べつつ、
「そう思えば、波多君はどうしたの?」
と、久世の傍に波多が居ない事を疑問に思う。
「課長、聞いて下さいよぉ、波多さんってば、昼休みになると一人で何処かに行っちゃうんです」
しょぼんと頭を下げる久世。犬の耳と尻尾があったら垂れ下がっている事だろう。
「あらら。ワンコちゃんを放っておくなんて、悪いご主人様だね」
と言えば、そうなんですと相槌を打つ。
久世はつい甘やかしたくなるような存在だ。だが、それはあくまで部下としての範囲としてだ。
少し前の自分だったら、彼のような手のかかる可愛い女性を恋人にしたいと思っていただろう。
だが今はもう恋愛をする気があまりおきない。
三木本が自分の世話をやいてくれるというのも理由のひとつかもしれない。
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