502人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
「歳なんて関係ないでしょう? こんなに好き合っているのに」
杉浦が不安に思うものはなくしていこうと、前に彼に言ったのだ。だから大丈夫だと思ってもらえるように彼の手を握る。
「あぁ、そうだな」
口角を上げる姿がさまになっていて、胸が高鳴る。
「この頃の杉浦課長は、人気なんですからねっ。時折見せる優しさに女子達がやられているんですから」
「そんなものどうでもいい。俺が惚れているのはお前だけだからな」
「それ、ズルい……」
照れた。
顔が熱くて両手で覆う。
「お前の方が可愛いじゃないか」
くすくすと笑い声をあげて、髪を掻きまぜられる。
杉浦とは同じくらいの身長で体格も似ている。だが、男前の度合いはかなり差をつけられている。
「課長のように良い男になりたい」
「十分に良い男だろう」
何を言っているんだと、微笑まれる。
「仕事、早く終わらせてください。俺とイチャイチャしましょうよ」
甘えるように首に腕を回して、後ろから頬を摺り寄せれば、
「わかった。俺は仕事よりお前が優先だ」
と軽く触れるだけの口づけをする。
「課長」
「なぁ、そろそろ二人きりの時は名で呼んではくれないか? 課長と呼ばれると会社にいるよな気持ちになる」
「そうですね。では、二人きりの時はお互いに名前で呼ぶってことで」
「そうしようか、雅臣」
早速、名を呼ばれて、照れくさくて顔が熱くなる。
「ヤバい、相当、グッときますね、これ」
「そうか。俺のこともグッとさせろ」
呼べと唇を撫でられる。
「征二、さん」
「……なるほど」
胸を押さえて上目使いで松尾を見る。
「予想以上にぐっとくるな、名前で呼ばれると」
こんなに愛しい人はいない。
「愛してます」
後ろから抱きしめれば、耳元に唇を寄せて「俺もだ」と囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!