憧れの風景

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支社のみんなは温かく迎え入れてくれた。本社に比べれば仕事のペースは多少ゆっくりしていたが、利益は確実に出している。そして、これまでと違う環境での新しい取り組みは、社会人として自分を成長させてくれた。本社と支社のどちらが上とか下とか、そういう捉え方は間違っている。与えられた環境が違だけで、それぞれがその場所でのベストを尽くしているのだ。 プライベートでは、新しい彼女と付き合い始めた。地元で生まれ育って地元で採用された支社のコだ。彼女には、この町の史跡名勝や、緑あふれる公園などをたくさん案内してもらった。休日には少し遠出して山の上から星を眺めたり、海までドライブしたりした。 ここは本当に良い場所だ。このコとここに根を下ろし、子供達にこの美しい風景を見てもらいながら育てていく。そんな未来を考えながら充実した毎日を過ごしていたら、あっという間に3年が過ぎた。本社に戻るか、と言う話がで始めたが、僕にその気はなかった。 そんな時、彼女から嬉しい知らせがあった。 「妊娠、したみたい」 「そうか!順番は逆になったけど、結婚しよう」 「はい!」 夢見ていた風景が、夢ではなく現実になるんだ。風光明媚なこの町に、本当の意味で生きていく事ができる! 「それにしても、ちょうど良いタイミングだったわ。アナタが本社に戻るのに併せられて。子供を育てるのに、こんな田舎じゃ不便ですもの。私たちは良いけど、子供にはやっぱり最先端の教育と、沢山の可能性がある都会での生活が必要でしょう? 出産のお祝いは、都会のお洒落なお店でアナタと2人、乾杯したいな」 ごめん、何言ってるかわからない。 嘘でしょ?
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