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帰り道
「もう、お祭りの時間も終わっているし、夜道も暗いから家まで送っていくよ。」
「僕も行こうかな。って言いたいところだけど、つかまっていたこの子たちを家に送っていくことにするよ。」
そういって青年の友人と別れ、家までの道を歩いていると、
「君に会えたのなら、とんでもない一日だったけど、外に連れ出してくれたあいつに感謝しないとだね。」
「そうだ、私は碧依。館川碧依っていうんだ。よかったら、君の名前を教えてくれないか?」
私は、少しドキリと胸が弾んだ気がしたが、一言、
「鞠子」と、そう答えました。
「鞠子か。かわいい名前だね。また、機会があったら会えるといいね。」
鞠子は自分の顔が少し熱を帯びるのを感じながら黙って隣を歩きました。
しばらくして見えてきた鞠子の家の前では、母親が心配そうに待っていました。
「では。またね。」
私は黙ってうなずくと、母の方に歩き出しました。
「鞠子ー!心配したんだよ。神隠しにあった子も言ったって。鞠子もかもって・・。よかった、本当によかった・・。」母は鞠子を抱きしめ心底安心したとばかり、肩を震わせました。
少し落ち着いたのか、顔を上げた母は、
「あら、でもさっきあなたと一緒にいた人は・・。」
「道に迷ったところを助けてもらって、ここまで送ってもらったの。」
「遠かったけど、たぶんあの方、あなたの許嫁じゃないかしら。」
手で頬を押さえながら、首をかしげる母の顔をみて、「まさか!」と、鞠子は振り返りましたが、碧依の姿はありませんでした。
『あの人が、私の・・・?』
ほんのり心に温かさが広がるのを感じながら、空を見上げると、そこにはお月様とお星さまがニコニコ笑っているように見えました。
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