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「神隠し・・。不思議なことって本当にあるのかな。私は今まで一度もそんなことを体験したことがないから半信半疑だな。」
「まぁ、神隠しにあったら、戻ってこられる確率は少ないと思うからね。不思議なことにあわないことが幸せってこともあるよ。」
私の疑問に対して、複雑な思いがあるのか、今までとは少し違った声音で青年は答えた。
気まずいような空気をかえようと、話を変えることにした。
「そういえば、お商売しているの?」
「そうだね。といっても私は家業を手伝っているって言ったほうが近いけどね。」
「私に声をかけてきたのも、お商売で慣れてるからなのね。普通だったら、見知らぬ人に声をかけるなんて抵抗あるもの。」
「そうかなー。人に声をかけるのに考えたこともなかった。」
そんな他愛もない話をしていると、
『きゃー!!!!!!!!』
どこか遠くから一際甲高い声が聞こえてきた。
祭りの雰囲気にのまれていた人々が一斉に止まり、声が聞こえたほうをいぶかしみながらみつめた。
「どうしたんだろう。」
そう鞠子は青年に向かっていったが、青年に鞠子の声は届いていないようだった。
「私は様子を見に行くから、君はここを動かないで待っていてくれないかな?」そういって走り出しそうな青年の袖をつかみ、
「ちょっと待って!ここに私を置いていくの?私も連れて行って。」
「いや、でも・・。」何かを言いかけ、少し考えた後青年は「そうだね。私と一緒にいたほうが安全かな。うん。一緒に行こう。」
青年は一人で自己完結すると鞠子の手を握り走り出した。
鞠子も青年の足に必死に追いつこうと、息を切らせながら走った。
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