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人ごみをかき分け、やっと声がしたと思われる場所についた。
だが、そこには可愛らしい巾着を握りしめ、泣きじゃくる女性がいた。
話を聞くにその巾着の持ち主の母親のようだった。
『少し目を離したうちにいなくなっただって。』
『物騒ね。』
『いや、でもちゃんと探せばまだ、そこらへんにいるんじゃないか?』
『突然消えたってよ。巾着だけが落ちてたんだと。』
『怖い・・。怖い・・。』
口々に噂する声を聞き、事のなりゆきを見つめる。
「その巾着見せていただけますか?」
その青年は、鞠子に声をかけた時のように、声にならない声で泣く女性に優しく話しかけた。
「はい・・。」
女性は震える手に握られた巾着を青年に渡しました。
しばらくその巾着をみつめ青年は何か納得したかのような顔をすると、
「ありがとうございます。」と、巾着をその女性に返したかと思うと、私の手を握り再び走り出しました。
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