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兄は小さい頃から、ファッションに関してはセンスが無かった。
着心地重視。モブ志向の彼は何より目立つことを嫌う。
なので、グレーのパーカー、ポロシャツ、地味なストレートのボトムに黒のスニーカーかクロックスが定番。
買い物に行っても、なんら面白味がない。
さて、弟。
割と幼い頃はセンスが面白かった。この面白いは、悪い意味ではなく『個性的』という良い意味である。
若い母親が好む、ファッションブランドの子供服などを上手く着こなしてくれたものだった。
が、しかし、貧困にあえぐ我が家。おのずと次男の服は兄のおさがりが当たり前となる。
そして昨日……
「服買いに連れってよ」
165センチ足らず。やたらと細くて手足の長い彼には、サイズの合う服が不足していた。
なにせ、兄はいつしかXLを着る巨体となり、お古は家族の誰にももう、着回すことができなくなっていたのだから。
さて、やって来たのはし〇むら。
「Tシャツが欲しい」
と言うので、私が見繕う。
「えー、それ嫌。
それは派手」
文句を言う彼が選んだのは……
「嘘やろ……?」
それはTシャツではなく、下着と言うものだ。
――しかもメッシュって。
私の知らない間に、息子のセンスは地に落ちていた……
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