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それから数週間後、俺達は正式に結婚の手続きをし、そのあとすぐに子供が産まれた。
俺は仕事に就き、万智に苦労をさせないように必死に働いた。
子供の成長を見るのは楽しかった。
時間が経つにつれ自分の子供のように思い始めた。
万智はやはり最高の女性だった。
家庭だけではなく、俺の心も支えてくれた。
俺は幸せを感じていた。
だけどもその分義孝の事を思い出すと辛くなった。あいつがこの幸せを感じるべきだったのに、と思ってしまうのだった。
何年か経ち、二人目の子供が産まれた。
この子は俺と万智の子供だった。
その頃には間違いなく、俺は万智を愛していた。
妊娠が分かるとその足で墓を訪れて報告した。
義孝も喜んでくれている。必死にそう思い込んだ。
子供達は勝手に成長していき、二十歳を迎え、結婚し、孫を見せてくれた。
孫もまた可愛かった。
家族が増える度に幸せも増えていった。
俺と万智は子供達が家を出ると自由な時間が増え、色々な場所に旅行に行った。
定年退職後は二人で農家をやり、米が出来ては子供達に送った。
終戦から五十年。
俺の五十年にはずっと義孝が付いてきた。
辛い人生だった。
早く死にたかった。あいつに怒鳴ってやりたかった。
しかし幸せな人生でもあった。
数え切れないほどの良い思い出がある。
良い妻と良い子供がいる。
良い孫もいる。
生きていて良かった。
本当に良かった。心からそう思う。
だが、だからこそ。俺はあいつの選択を許さない。絶対に許さないーー
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