第1章

2/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 さて、無事に林田が機械のボタンを押して戻ってきたので、桜太は早速電子レンジの実験を提案した。その林田だが、大学からかっぱらってきたと思われるプラズマボールを抱えていた。どうやら亜塔と同じく序でに遊んでやろうという魂胆であるらしい。  まあ、プラズマと聴いて真っ先に思いつくものは世間一般ではテレビではなくこのプラズマボールだ。あのガラスボールの中でばちばちと電気が走っている代物である。置いてあるとついつい指をくっつけて遊んでしまうあいつだ。 「なるほど。電子レンジの実験ね。随分とメジャーなのをやるんだ」  もさもさの天然パーマを揺らしながら林田はさっさとプラズマボールのコンセントを差して起動させる。雷のような光が現れるとすぐに指をくっつけて遊び始めた。指導する先生が真っ先に遊び始めるというのはどういうことだろう。自由過ぎる。桜太は頭痛がしてきた。 「それで、どこに電子レンジがあるんですか?」  桜太は頭痛を振り払うと訊いた。ともかく電子レンジの行方を知らなければならない。林田が帰って来る前に化学教室を捜索していたが見つからなかったのだ。 「ああ。ここを離職する時にさすがに置きっ放しは拙いかと思ってさ。倉庫に移動させておいたんだよ」  林田がようやくプラズマボールから指を離した。場所が聞き出せたものの、またしてもかと思ってしまう。何かあると出てくる倉庫。林田の言う倉庫は間違いなく図書室の横にあるヤツだ。どうしてそこに有象無象のものを放り込みたがるのか。科学部の資料を取りに入った時に思ったが整理もされておらず、要らないものを適当に放り込んである場所だ。もし火事が起こるとすれば化学教室よりも断然倉庫のほうが確率が高いように思える。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!