第1章

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「それじゃあ、実験に使用していいんですね?」  呆れ返ってしまった桜太に代わり芳樹が訊いた。芳樹はまだ林田に対して耐性がある。 「もちろん。ぜひ役立ててくれ。置いておいてもただのガラクタだ」  林田は嬉しそうに言うが、置いた本人がガラクタ呼ばわりとはどういうことだろうか。ガラクタと思っているなら捨てていけ。まったく困った先生だ。しかしこれでプラズマ実験は何とか成り立ちそうだ。たとえ七不思議に絡んでいなくても関係ない。 「よし。じゃあ俺たちが取ってこよう」  珍しく亜塔が率先して立ち上がった。実は実験の為に倉庫に取りに行きたいものがあったのだ。  ちなみに俺たちとは三年生三人のことである。亜塔が請け負った時点で大人しく芳樹も莉音も立ち上がっていた。この亜塔に付き合えるのは自分たちだけだとの思いもある。 「その実験って他に何がいるんだ?」  すでに実験へのやる気を漲らせている迅が訊いた。普段の数字中毒もどこへやらだ。今日は一度も数字を見ていないというのに不機嫌になることもない。 「マッチと蝋燭とガラス瓶。後は段ボールがあるといいな。台座に使うんだ」  以前に読んだ本の内容を思い出しながら桜太は答える。その本によると動画サイトで別の誰かがやった実験を見られると書いてあったが、桜太は発見できなかった。だからぜひとも成功させたい。 「ガラス瓶なら化学教室にいくつかあるな。蝋燭とマッチは?」  楓翔が窓際に置かれたガラス瓶を確認する。そこには大小さまざまなガラス瓶が乾かすために雑巾の上に置かれていた。しかしマッチも蝋燭も先ほど教室を探した時に出てこなかった。 「ここだよ。さすがにマッチは安全管理が必要だしね。蝋燭も一緒に入れてあるよ」
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