第1章

6/8

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「瓶は蓋代わりなんだよ。そうしないとプラズマの炎が電子レンジの中を焼いてしまうからね。段ボールも貸してくれ。ガラス瓶の口の部分につけて蝋燭を入れやすいようにするから」  言いながら桜太はしっかりハサミまで千晴から借りていた。自分から率先して動く気がない。 「こっちは炭の実験の用意をしよう。先生、ACアダプタください」  亜塔が当然といった顔で手を出す。いくら化学教室でもACアダプタはないだろうと二年生は思ってしまった。 「ええっ。ACアダプタを使うの?普通にコードをコンセントに繋げばいいじゃないか」  林田は安全性を無視してそんなことを言う。本当に監督する気があるのかと誰もが疑いの目を向けた。 「ちっ。最近は携帯会社がケチで昔みたいにくれないから、貴重なのに」  嫌々ながらも林田はリュックサックからACアダプタを取り出した。しかしプラグのところが出てきただけで引っ掛かる。無理やり引っ張るとリュックサックから大量のコードが塊となって現れた。色々なコードを突っ込み過ぎて絡まっているのだ。 「何でコードを大量に持ち歩いてるんだろう?髪形のせいかな?」  迅がこっそりそんなことを呟く。たしかに大量の絡まったコードは林田のもさもさ天然パーマに見えなくもない。それにしても三年生には林田が大量のコードを持ち歩いているのは常識であるらしく、白けた目で見ていた。 「これでACアダプタはオッケーだ。後は釘とワニ口クリップとビニールテープだな。それと感電しないようにゴム手袋を用意しないと」  亜塔が実験に必要なものを上げたので、迅と楓翔が動くことになった。先ほど化学教室を捜索したおかげか、あっさりとそれらの物が見つかる。どうして釘が化学教室にあるのか謎だが、それは科学部の先輩たちの置き土産と思うのが無難だった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加