第1章

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「この電子レンジって750ワットにできますか?」  瓶の細工が終わった桜太がまだコードと格闘している林田に訊く。何だか一段と絡まっているのは気のせいだろうか。 「それはもちろん。実験用に買ったヤツだからね。妥協はしてないさ」  林田は自慢げに言う。それならなぜガラクタ呼ばわりしたのかと思ってしまうが、突っ込むだけ無駄だろう。 「何で750ワットに拘るんだ?」  優我が残った段ボールで蝋燭の台座を作りながら訊く。 「いや。読んだ本に750ワットで成功したって書いてあったからさ。500ワットだと上手くいかないんだとさ」  桜太は言いつつ電子レンジをチェックした。大手国内メーカーのもので品質に間違いはない。これを化学反応のために使っていたと聞いたら開発者は泣きそうだ。しかし今からプラズマ実験に使う桜太が言えた義理ではない。 「へえ。何だか大実験の予感だな。シャープ芯を使う場合はちょっとしょぼいかなと思ったんだけどさ」  優我はにんまりと笑う。さすがはレーザーの出力に拘りを見せただけはある。どうやら派手な実験に興味津々なのだ。完全なマッドサイエンティスト候補である。 「取れた――!!」  そこに林田の雄叫びが響いた。絡まって難解な知恵の輪状態だったところからACアダプタが引っこ抜けたのだ。 「こっちはもう釘も刺して準備万端です」  亜塔が冷たい視線で林田を見ながら受け取る。 「そうだ。同時に実験するなよ。ブレーカーが飛んだら起こられるのは俺だぞ」  林田は電子レンジと亜塔を見て注意した。こういうところだけは監督者としての顔になる。以前にブレーカを落とした経験があるのは間違いない。
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