408人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
パソコンにデーターを打ち込んでいると、「おはよう」という挨拶が聞こえた。
一瞬「僕に?」と思ったけど、こんな時間に僕に挨拶をする人なんかいないので返事をしないでいたら、今度は「樋口君」と名前を呼ばれた。
振り返ると、三石さんが立っている。
「三石さん、どうしたの?」
気がつけば同期会から既に3週間が過ぎていた。
その間一ノ瀬の事を考えないように、経理の仕事とペットショップの仕事を前にもまして一生懸命こなしていた。
「この前は、ごめんなさい」
あー、山口君の事か。
「あれは飲み過ぎた僕が悪いから、気にしないで」
「………うん。
あのね、最近一ノ瀬君元気がないんだけど、何か知ってる?」
「知らない」
自分でもびっくりするくらい冷たい声が出た。
「え?」
「だから、知らないんだ。
あの日以来、一ノ瀬とは会ってないから」
こんなに感情的になることは、今はまでなかったかもしれない。
これ以上話していたくなくて、僕はパソコンに目を向けた。
すると……
「分かった。私が何とかするわ。
樋口君、定時後迎えに来るから待ってて」
三石さんは「よし」と気合いを入れて、歩いて行ってしまった。
え?
何とかするって何を?
それに、定時後って……
僕はため息を1つついて、仕事の続きを始めた。
バイトの日じゃなくて良かった。
最初のコメントを投稿しよう!