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いつものようにテキパキと仕事をこなしパソコンの電源を落としていると、既に帰る用意をした三石さんが近づいてきた。
「樋口君、もう帰れる?」
「大丈夫」
「じゃあ、ついてきて」
三石さんはそれだけ言うとスタスタ歩いて行ってしまったので慌てて追いかけると、会社の裏通りにある小さな喫茶店に入って行った。
「マスターホットコーヒー。樋口君は?」
「あ、僕も」
三石さんはカウンターにいた男性に声をかけて、奥の目立たない席に僕を案内した。
「いきなりごめんね。
予定は大丈夫だった?」
確かめるの今なんだ……
「あ、今日は大丈夫」
「良かった。いつも順番が逆になっちゃうのよね」
悪びれた様子もなく笑う三石さんを見ていると、だんだん緊張が解れてきた。
「ここ、いいお店でしょ。
常連さんしか来ないから落ち着くの」
そう言いながら美味しそうにコーヒーを飲む彼女を見ていると、今まで苦手意識を持ってたけど案外悪い子じゃないんだなって思えて来る。
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