プロローグ

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大人になるためには「痛み」が伴う。  と、大人はいった。  だから私達は18歳になる日に「殺人」を犯さねばならない。それが大人になるためのルール。大人が決めた大人になるための条件。  私達は人を殺して、人を殺したという罪悪感を抱えて生きていく。人を殺してしまった、その痛みを知って初めて大人になれる。痛みを受け止めて初めて、子どもは大人として生きていくことができる。  18歳。その日が来るまで私達は大人になれない。どれだけ大人びても、大人のふりをしても、人を殺すまでは私達は大人ではない。痛みも、人を殺すことも、人を殺す方法も、何もかも知らない無邪気で可愛い子どものまま。  大人になるためには「痛み」が伴う。  けれど、そう。  例えばの話だけれど。  18歳になるまでに人を殺してしまったとしたら。  その瞬間から、私は「大人」になったのだろうか。「大人」として生きていかねばならないのだろうか。それとも18歳になるまで「大人」ではないのだろうか。  痛みを抱えて生きていくことが大人としての条件だとしたら、私はもう「大人」なのだろうか。痛みも、人を殺すことも、人を殺す方法も、死ぬ前の人がどんな声をあげるかも、どんな目で私を見るかも、人が死んだらどうなるかも全て知ってしまったのに私は、私は「子ども」なのだろうか。 13歳のあの日、 私と相島アキラは「大人」になった。
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