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「私はこの黄昏町の案内人、ハンナと申します。では、カンナの家へご案内致します」
バスを降りたところで女性……いや、ハンナが言った。
名前も日本人らしくない。と言うのも、ハンナの容姿は日本人離れしている。
白い肌に、ブラウンの瞳、同じ色の柔らかそうな細く長い髪を後ろで纏めている。染めているにしても日本人ならもっと髪は太いし、目の色だってこんなに鮮やかなブラウンは初めて見た。
何なんだ、ここは?
そういや、何処かの地方に外人達がいっぱい居て、それこそ日本に居ながら外国に住んでるような体験が出来るトコがあるって聞いたな。
ここはもしかしたらそんな場所の一つなのかもしれない。
ハンナが日本人でもないのに日本語に達者なのも、この町のこの風景も、そういうことなら頷ける。
まあどっちにしろ、そーゆー疑問はカンナとやらが解決してくれるだろう。
ハンナの口ぶりから、カンナは町の有力者と考えられる。そんな人なら大体のことは知っているはずだ。
ハンナに連れられて、両サイドを緑に覆われた白い砂利道を進んで行くと、前方に洋館風の立派な家が見えてきた。
あれがカンナの家かもしれない。
その、洋館風の家の門前で、ハンナは一度止まって振り返り、俺を見た。
ハンナの顔は、会った時から変わらず、すっとあの気色悪い笑顔のまま。
表情を変えるってことを知らないのか?
「ここがカンナの家です。くれぐれも粗相のないように注意して下さい」
頷いてから、さっと建物を見渡した。
二階建ての豪奢な建物だ。来る途中にポツポツと建っていた家の前を通り過ぎたが、それらは可愛らしい平屋で、小さなものだった。
差は歴然だ。
高い塀に囲まれて、鉄格子の堅牢な門があり、そこから覗くと、中には美しい噴水や、立派なバルコニーがある。
ハンナは門を押し開け、中へ入る。
黙ってそのままついて行き、建物の中へ入った。
中も凄い……。
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