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笹の小枝に吊り下げられた短冊が夜の風に揺れる………
僅かな熱と湿り気を含んだ今の季節ならではの風………
ただそんな風も今は肌に心地いい………
満天の星空に天の川はひときわ明るく輝き………
きみとこうしていられるひとときに命の息吹を感じる………
そう、また今年も………
先を歩くきみが振り返り、少し焦れた素振りで告げる
「ねえ、急ぎましょう。この姿でいられるのは今夜だけなのよ」
女性というものは意外と現実的だ
大地の上でも、空の上でも
ぼくは軽く苦笑いして、いとしいひとに言葉を返した
「わかってるよ。行こう、織姫」
そして今宵、世界の片隅で
ぼくたちは
年に一度の現世の恋に身を寄せ合う………
END
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