ダメ親父 はしる

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「お父さん」  娘の梢が、振りかえる。  あいつは最近、ますます母親に似てきやがった。  形見の浴衣をきて、同じ場所で振り返りやがって。  あのとき、薫は、プロポーズしたオレにいいやがった。 「はやいよ。でも。ありがとう」  オレは、ダメ親父だ。  薫を守れず、いい父親にもなれず、酒を飲んで愚痴ばかりだ。  でも、今日は。 「間にあわせる」  オレは叫んだ。  梢を抱えた。  はしった。  向かいから男が来る。  土木作業で鍛えた足をなめるな!  地をけった。  脇をくぐった。  男をかわした。  今度は人垣だ。 「ちくしょぉ」  頭から突っ込んだ。  轟音。  間に合った。  花火があがった。 「お父さん、もう。でも、ありがとう」  やっぱりオレはダメ親父だ。  でも、2人が、ありがとうといってくれるから。       
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