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星の降る町
ライトアップされた七夕飾りの向こう側は、星、星、星……。
宝石箱をぶちまけたような夜空に息を呑んでいた。
「すげぇ……」
真っ暗な天を横切るのは、薄雲のような帯。
その中にも青や赤、白の輝きが散らばっている。
「天の川って、あんな姿だったのか」
思わず呟いた僕を、ナナが振り返る。
「知らなかった?」
「テレビとかで見たけど……自分の目で見ると違うなあ、って」
フェンス越しの夜景にうっすらと見える不夜城の町で、僕らは出逢った。
あの町にはいつも光が溢れていて、賑やかで。
刺激に満ちている。
一度も町を出た事のない僕が知っているのは、写真や映像で観る夜空だけだ。
この町は、『星の降る町』。
不夜城の町から離れた、天の光に近い場所。
「『田舎には何もない』なんて、言わないでよね」
この町で生まれ育った彼女は、べぇっ、と可愛らしく舌を出して見せた。
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