第一章 とある夏の日の一幕

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急いで読んでいた分厚い本を戻し、書斎をあとにした。 この書斎は父が昔趣味で集めてた本を兄や僕の為に本棚を作って並べた部屋だ。 広さは大体…22㎡ぐらいで、机と椅子と本…あとはガラクタがあるだけ。 てか、書斎ってなってるけど、正直図書館って感じだよな…。 まあ、呼び方ぐらいどうってこと無いけど。 そんな書斎を出た僕は、11㎡程度の自室に戻り、予め中身を入れてたカバンを手に取り、キャップ被って、部屋を出た。 バタバタバタ… 「カルミア、遊びに行くのかい?」 走る僕にそう声をかけて来たのは、僕より頭半分大きな少年。 「はい!サジェス兄様!」 そう彼の名前はサジェス・エスポワール。 僕の2つ上の兄だ。 サラサラとした茶髪に柚葉色(ゆずはいろ)の瞳、慈愛に溢れた優しい顔立ちと、ほんの少し焼けた肌。 その体はキッチリと鍛えられ、引き締まっている。 知力、武力ともに高く、僕の出来過ぎた兄の1人。 だが、今は柚葉色の瞳を細め、じっと僕を見つめる。 「父さんにちゃんと言ったかい?」 ギクッ 「はあ…その顔はまた無断外出だね…」 ため息をこぼし、額に手を当て、呆れたとでも言いたげな表情でそう言った。 「だって、いつも何処に誰と何時までいるかって、凄くしつこく聞くんですよ?僕だってもう7つで男ですし、少しぐらい自由に遊びたいんです。」 そう、僕にだってちゃんと言い分はある。 「うーん、確かにちょっと過保護過ぎな気もするけど…仕方ないんじゃないかな?魔流、まだ来てないんだろう?まあ、剣術は割と出来てると思うよ。」 「それはっ、そう……ですけど…」 小さくなる声とは裏腹に激しい劣等感が湧き上がる。 魔流…それは魔力が体に流せるようになる時期もしくはそれ自体を指す。 早い話が、魔力で魔法が使う事が可能になるって事だ。 魔流は早い者では3歳、遅くても6歳で起こる。 この世界では魔法は皆必ず使える。 魔力無しでも、それは大体魔力が封印されているだけの為、解放の儀ーリベラシオン・リットを行う事で、魔力が使えるようになる。 その為、魔流が早くても遅くても、あまり問題視されない。 大体が個人差という事で済まされるだけだ。 僕の場合、7つになった今でも魔流の兆候である、高熱や頭痛の1つも無い。 周りから多少の心配はされたが、健康で何よりと皆仲良くしてくれている。
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