第一章 とある夏の日の一幕

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解放の儀ーリベラシオン・リットは、伝統ある神聖な教会でしか出来ず、お金がかかる。それもあまり安くない額だ。 この村には、そのような教会はない。 近くの他村にあるにはあるが、ボロボロで孤児院のようになっている為、儀式は出来ない。 伝統も、神聖さもない…牧師さえいない教会 出来るはずがない。 その為、僕の魔流が封印だったとしても、どのみち自然に解けるのを待つぐらいしか、方法が無いんだ。個人差だろうと片付けられる。 ただずっとずっと…兄や友、親に近所の人に守られるだけ。捨てられてないだけマシだ。 でも、湧き上がる劣等感が酷く嫌なだけ。 それが生き地獄だと知っていても何も出来ない。 ま、どうせ僕の中の劣等感なんて…所詮嫉妬が変化した…ただの醜い感情だ。 いつものように、笑って誤魔化せばいいだけだ。 …そう、笑ってしまえば皆happy。 僕みたいな奴は呑気にしてるだけでいいんだ。 魔流が『遅い』ごときで死ぬわけじゃないんだし。 だから僕は…今日も馬鹿みたいに言葉並べて笑うんだ。 「別に僕は魔流なんて気にしてませんし!そこまで遠くには行きませんから。」 完璧に作り上げた無邪気な笑みを浮かべ、サジェス兄様を見返す。 「はあ、分かったよ。父さんには僕から言っとくから。お友達を待たせるのも、可哀想だしね。」 困ったような笑みを浮かべ、サジェス兄様は仕方ないとばかりに許可をくれた。 「やったー!サジェス兄様、ありがと!じゃあ、行ってきます!」 満面の笑みでそう言って、サジェス兄様に手を振りながら、再び走り出した。 「行ってらっしゃい。気をつけて遊ぶんだよ。」 サジェス兄様は手を振り返し、そう忠告を出し、歩いて行った。
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