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「まさか雀ちゃんにそんな特技があったなんて。お姉さんますます興味深いわ」
いつの間にか呼び方が雀ちゃんに変わっていた秋葉が、心底楽しそうに言った。彼女そういったものが好きなのだろう。
「催眠術を掛けて、皆さんの『心のリミッター』を外します。そうすると普段理性や体裁や恐れのせいで、やりたいけどできなかったことができるようになります」
「もしそれが例えば法を犯したり危険な方向へ向かうような時は、私が掛けた『保険』が働くようになっています。なのでワタシの経験上これでほとんどの人は人生が良くなるか、最悪何も変わらないかです」
ここに来てから一番の饒舌だった。彼女の説明には人を引き付ける力があった。
「面白そう。やってやって」
「ちょっと怖い部分もあるが、人生が良くなるって言われちゃな」
「オレも、ぜひお願いしたいっす」
「…」
樹は特に反論することもなかった。
そして海鳴は、一人ずつに催眠術を掛けていった。
最後に海鳴は樹に催眠術を掛けた。
「…え?」
「…?」
その時、海鳴は何かに驚いていたように見えた。
そして樹自身も。
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